『戦国会津唄』

あらすじ
戦国時代、上杉家の重臣・岡野左内は、かつて伊達政宗を追い詰めたほどの武勇を誇る武士だった。しかし、老齢になると極端な倹約を徹底し、家臣や領民にまで粗衣粗食を強いることから「吝内(りんない)」と嘲られ、世間から侮られる存在となる。
左内の一人娘・小房は、その評判のせいで町の子供たちから「冷え食い虫」と罵られ、いじめを受けていた。特に林茂左衛門の息子・大九郎に絡まれた際には、幼なじみで許嫁の土岐市之丞が助けに入る。しかし、市之丞の父である上杉家の侍大将・土岐六郎右衛門が左内から借金をしていたことが発覚し、二人の関係に亀裂が生じる。
小房は父の倹約ぶりを恥じ、自らの境遇を嘆くが、実は左内の吝嗇には大きな理由があった。彼は私財を蓄え、武器や甲冑を買い集めていたのだ。それは、いずれ訪れる戦乱のため、上杉家のためにすべてを捧げる覚悟の証だった。
そして時は流れ、関ヶ原の戦いを前に、上杉景勝が挙兵を決意。しかし、藩の財政は厳しく、戦の準備もままならなかった。そんな時、左内が突如として莫大な軍資金と武具を献上し、景勝や家臣たちを驚愕させる。彼の倹約は、まさにこの時のためだったのだ。左内の忠義が明かされたことで、世間の嘲笑は一転し、彼の名誉は回復される。
市之丞もまた、左内の真意を知り、自分の無知を悔いる。彼は小房に再び愛を誓い、二人は和解するのだった。武士の誇りとは何か、忠義とは何かを問いかける、戦国時代の感動の物語。