『宗近新八郎』

あらすじ
剣の達人でありながら、尺八を愛する穏やかな性格の宗近新八郎は、藩政の激動に巻き込まれることとなる。手綱藩の城代家老・戸沢監物は、10年以上にわたり藩政を取り仕切ってきたが、その専横ぶりに対する不満が高まっていた。藩の重臣平林六郎右衛門は、新八郎に監物の御意討ち(上意による暗殺)を命じる。
しかし、使命を果たすため監物と対峙した新八郎は、彼の政治が藩の未来を思うがゆえのものであったことを知る。監物の語る真実に心を打たれた新八郎は、彼を討つのではなく、その意志を守る道を選ぶ。そして、監物の密命を受け、藩の財政立て直しのために江戸へ向かい、幕府老中・水野出羽守との交渉に挑む。
一方、藩内では新八郎が監物と通じ、藩の秘宝「木鶏の山水」を持ち去ったとの疑惑が流れる。これを信じた六郎右衛門の息子・平林慶次郎が、新八郎を討つため江戸へ向かう。愛するおぬいは、新八郎の真意を確かめるため、一人で彼の後を追う。
江戸で新八郎を見つけたおぬいは、彼が藩のために動いていることを知る。しかし、慶次郎が襲いかかり、宿命の対決が始まる。剣ではなく、愛用の尺八で慶次郎を制した新八郎は、彼に真実を語るが、慶次郎はなおも怒りを捨てきれず、復讐を誓う。
やがて新八郎は、おぬいと共に国元へ戻ることを決意する。激動の中でなお揺るがぬ誠実な心と、愛する者と共に歩む覚悟を胸に、新八郎は新たな道を進んでいくのだった。