『日本婦道記 髪かざり』

あらすじ
浜田藩の港町にある廻船問屋・新津屋の娘 お稲 は、海を見つめながら、父 勘右衛門 の帰りを待ち続けていた。父は、新しく建造した船 浜田丸 に乗り、江戸へ向かったまま、消息を絶っていたのだ。
父は、弟 十吉 の誕生を機に、漁業から廻船業へと転身し、苦労の末にようやく商売を軌道に乗せた矢先の出来事だった。夏が過ぎ、秋になり、冬の気配が漂う頃になっても、浜田丸の帰港を信じるお稲。しかし、ある日、老手代 和平 から「船板が見つかった」と告げられ、浜田丸が嵐に遭い 難破 したことを知らされる——。
突然の悲劇に襲われながらも、お稲は母と弟を守るため、自らの力で家業の後始末をしようと決意する。さらには、亡き父の意志を継ぎ、苦難を乗り越えながら、強く生きていこうとするのだった。
『髪かざり』は、時代に翻弄されながらも、ひたむきに前を向く少女の成長を描いた感動の物語。家族を支えようと奮闘するお稲の姿に、時代を超えた普遍的な強さと、人生を切り拓く勇気が込められている。