『しゅるしゅる』

しゅるしゅる 山本周五郎

あらすじ

若き城代家老・由良万之助は、次席家老の片桐五左衛門から、藩主付きの作法教授を務める老女・尾上あきつの教育方針が厳しすぎるとして、彼女に注意をするよう頼まれる。実際にあきつの元で学ぶ藩士の娘たちは、折檻を受けることも多く、万之助の元にも不満が寄せられていた。

あきつと対面した万之助は、彼女が男のような袴姿で毅然とした態度を取ることに驚く。そして「作法とは、単なる形式ではなく、生活の中に根付くべきもの」と主張するあきつの信念に、彼は次第に興味を抱く。

そんな中、城下の料亭「牡丹亭」で偶然あきつと再会した万之助は、彼女を挑発し、思いつきで川の急流を渡る無謀な船遊びに誘う。だが、船が転覆し、二人は嵐のような川に投げ出される。命がけの脱出を経て、万之助は気を失ったあきつを岸へと引き上げる。

意識を取り戻したあきつは、動揺しながら「忘れましょう」と告げる。二人は互いの存在を意識しながらも、なかったことにしようとする。しかし、万之助は彼女がかつて江戸で世話になった伊村曹将の娘であり、自分を「進次郎」と呼ぶ幼馴染だったことを思い出す。

万之助は、冷静で理知的なあきつの内に秘められた情熱と優しさに気付き、改めて彼女を人生の伴侶として迎えようと決意する。やがて母・信乃女にも背中を押され、彼はあきつを正式に迎えることとなるのだった。

「しゅるしゅる」という音は、かつて二人が江戸屋敷の庭で「蛇の這う音」について言い争った時の記憶に由来する。それは二人の関係を象徴するように、いつの間にか心の奥へと忍び寄り、深く絡み合っていたのだった――。」

書籍

created by Rinker
¥99 (2025/04/19 09:53:34時点 Amazon調べ-詳細)

朗読


山本周五郎YouTube朗読チャンネル

本文