『義理なさけ』

義理なさけ 山本周五郎

あらすじ

小田原藩大久保家の江戸屋敷で年寄役を務める中山良左衛門は、ある日、息子甲子雄の部屋から女中のしず江がこっそり出てくるのを目撃する。不審に思った良左衛門が彼女を問い詰めると、彼女は動揺しながらも何も語ろうとしない。しかし、机の上に残されていた手紙には驚くべき内容が書かれていた。
そこには「甲子雄と約束を交わしたのに、別の女性と婚約したことを恨む」との言葉が記されていたのだ。しかも、「このことが公になれば大変なことになる」といった含みのある文章まで書かれていた。

良左衛門は事態の深刻さを悟り、しず江を問い詰めるが、彼女はただ「申し訳ございません」と泣き伏すばかりだった。一方、息子の甲子雄を呼び出し、この件について問いただすが、彼は「何も言えません」と口を閉ざす。良左衛門は、誤解を恐れたしず江が、自らを犠牲にして甲子雄の婚約を壊そうとしたのではないかと考え、彼女をそっとかばう道を選ぶ。しかし、しず江はそれを知り、自責の念から家を出奔してしまう。

やがて甲子雄は、しず江の行方を必死に追い求めるが、彼女は見つからない。その間、彼は親しい若侍菅沼小七郎、矢野伊太夫、鹿野安二郎たちと交流しつつも、しず江への想いを募らせていく。そして、矢野から元婚約者の女性が別の男と過去に関係を持っていたことが暴かれ、甲子雄は自らがしず江に守られていたことを知る。

数ヶ月後、小田原へ移った甲子雄は、偶然にも料亭で働くしず江を発見する。ついに彼女と再会し、胸の内を伝えようとするが、しず江は「私はあなたにふさわしくない」と言い残し、彼の前から姿を消してしまう。

しかし、彼女を諦めきれない甲子雄は、しず江の行方を追い続ける。そして、彼女が遠い親類を頼って松田に向かったと知ると、夜道を駆けて彼女のもとへ向かう――。
果たして、二人の運命はどのような結末を迎えるのか?義理と情の間で揺れる、切なくも美しい人間ドラマが展開される。

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