『おたふく物語 01 妹の縁談』

あらすじ
日本橋長谷川町に住むおしず(32歳)は、長唄の師匠として家計を支え、妹のおたか(26歳)と共に年老いた両親の面倒を見ながら慎ましく暮らしていた。家族にはすでに所帯を持った長兄の伊吉、そして乱暴者で前科持ちの次兄英二がいる。英二は家族に迷惑をかけ続けており、おしずとおたかは彼の存在に頭を悩ませていた。
ある日、おたかに縁談が持ち上がる。相手は下谷稲荷町の綿問屋「信濃屋」の息子友吉。友吉はおたかに惚れ込み、両親の弥助とてつも結婚を望んでいた。しかし、おたかは姉を残して嫁ぐことに抵抗があり、さらに英二のことも気がかりで、縁談を断ろうとする。
一方で、おしずにも思いを寄せる相手がいた。長谷川町に住む彫金師貞二郎である。彼の作品に惹かれ、ひそかに帯留めや簪を彫ってもらっていたが、家庭の事情や自らの年齢を理由に、自分の恋心を封じ込めていた。
しかし、おしずは妹の幸せを願い、英二との縁を断つことを決意する。英二を戸籍から抜くことで家族との関係を清算し、おたかの結婚を安心して進める道を模索する。そして、おしずは機転を利かせ、貞二郎との縁も考えているような素振りを見せることで、おたかの結婚への迷いを取り除こうとする。
こうして、おたかはついに心を決め、信濃屋へ嫁ぐ決意をする。そして、おしず自身も、自分の未来を見つめ直していく——。
家族への愛、姉妹の絆、そして女性としての人生の選択を描いた、心温まる物語である。