『水戸梅譜』

あらすじ
時は江戸時代。水戸藩主・徳川光圀のもとへ、一人の貧しい浪人が仕官を願い出る。その男の名は五百旗五郎兵衛。かつて奥州の猿ヶ阪藩に仕えていたが、主家が改易され、今は浪々の身となっていた。
五郎兵衛は「武士の誇りを持ち、水戸藩に忠誠を尽くしたい」と懇願するが、光圀の執事・鈴木主税は、彼を怪しみ取り合わない。さらには金包みを渡して追い返そうとするが、五郎兵衛はこれを固辞し、庭先で静かに腹を切った。その潔さと覚悟に、光圀は深く後悔し、彼の遺族を捜すよう命じる。
一方、五郎兵衛の妻・やすと息子・小次郎は、千波ヶ原の荒地でひっそりと暮らしながら、土地を耕し生計を立てていた。小次郎は幼くして父を亡くしたものの、母の教えを受け、「父の志を継ぎ、武士として生きる」と心に誓う。
やがて、千波ヶ原が農地として実を結び始めると、地主のくるまや六造が高額な年貢を要求し始める。やすはこれを拒むが、そのことで代官井野甚四郎に捕らえられてしまう。帰郷した小次郎(すでに成長し、父と同じ「五百旗五郎兵衛」と名乗る)は、母を救うために奔走する。
そんな折、光圀が代官所を訪れ、千波ヶ原の農地争いについて報告を受ける。そこに連れてこられた五郎兵衛(小次郎)は、父の遺志と自身の覚悟を語り、光圀の心を打つ。そしてついに光圀は、かつて見捨ててしまった父・五郎兵衛の死の真相を知ることとなる。
自らの過ちを悔いた光圀は、小次郎を正式に水戸藩士として取り立て、千波ヶ原の年貢問題も解決する。こうして父の無念は晴れ、小次郎は武士として新たな道を歩み始めるのだった。