『孫七とずんど』

あらすじ
遠江国・浜松城。榊原康政の家臣である柿ノ木孫七郎(孫七)は、体格が大きく、のんびりとした性格の侍。どんな状況でも焦らず、豪雨の夜に長屋が倒れても平然と眠っているような男だった。その親友である石原寸度右衛門(ずんど)は、孫七の本当の価値を誰よりも理解し、彼を世に出すために奔走するが、孫七は馬の話ばかりで色恋にも興味を示さない。
そんな折、徳川家康は武田方の天方城攻略を決定し、榊原軍も出陣することに。ついに孫七にも初陣の機会が訪れる。戦場に赴いた孫七は、気合の入りすぎたずんどとは対照的に、周囲の熱気にも流されずマイペースを貫く。戦の気合をつかむためと、のんびり戦場を歩いているうちに、気づけば敵城・天方城の城門前に到達。そこへ味方が駆けつけ、「孫七が一番乗りを果たした」と勘違いされる。結果的に彼の行動が勝利の決め手となり、孫七は思いがけず手柄を立てることになった。
戦後、孫七は戦場の危険を身をもって知り、「一人身ではいられない」とつぶやく。彼の変化を見たずんどは、改めて孫七とお初の縁談をまとめようと奮闘するのだった——。
武士としての生き方、友情の在り方をユーモラスに描いた、山本周五郎の痛快時代小説。