『ほたる放生』

ほたる放生 山本周五郎

あらすじ

岡場所「よね屋」で働くお秋は、長年付き合っている男村次のために体を売り続け、苦しい日々を送っていた。村次は彼女を苦労させる一方で、「もうすぐ仕事がうまくいく」「必ず楽をさせる」と言いながら金を無心し続ける。

そんなお秋に想いを寄せるのが、船宿「船忠」の船頭藤吉だった。藤吉はお秋に何度も「俺と一緒になってほしい」と懇願するが、お秋は自分の境遇を理由にそれを拒み続ける。

一方、新しく「よね屋」に入った少女おせんは、怯えたような様子で周囲に心を開かない。そんな彼女を不憫に思い、お秋は気にかけるが、やがておせんと村次が関係を持っていることを知る。村次は、お秋を田舎の遊郭に売り払い、おせんを新たな女に仕立てようとしていたのだ。

裏切られた怒りと悲しみに震えるお秋は、村次を殺す決意をする。しかし、その前に藤吉が先に手を下してしまう。「お前のためにやった」と語る藤吉に、お秋は涙を流しながら「一緒に逃げよう」と訴えるが、藤吉はそれを拒み、姿を消してしまう。

残されたお秋は、泣き崩れながらも、藤吉の言葉を胸に、新たな運命に向かおうとするのだった。

――闇夜に放たれたほたるのように、自由を求めた彼女の行き着く先とは。

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