『平安喜遊集 03 もののけ』

平安喜遊集 03 もののけ 山本周五郎

あらすじ

因幡国の掴み峠には、**「もののけ」**が棲むという噂があった。峠を越えた者は皆、満面の笑みを浮かべて死んでいた――「楽しかった」「生まれてきてよかった」と言い残して。

この怪異を退治するため、検非違使の矢筈ノ景友が部下の斗米ノ護(大食漢)、井汲ノ酒男(酒好き)、鉾(女好き)と共に派遣される。しかし三人は、それぞれの欲望を突かれ、満足げに命を落とす。

景友は策を巡らし、美しい少年の木像を峠に設置する。やがて現れたのは、美しい姫の姿をしたもののけ。彼女は木像に恋焦がれ、やがて怒り狂い、正体を現す。

景友は矢を放ち、姫を討ち取る。しかし、彼女は最期に呟く。
「私の手にかかった者は皆、極楽の喜びを味わったのに……人間こそ無慈悲だ」

景友は勝利したはずだった。しかし、その言葉が心に重く残る――。

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