『与之助の花』

与之助の花 山本周五郎

あらすじ

享保二年三月、越前・亀山城の宝庫。勘定奉行・折田税所の次男 折田与之助 は、秘かに城の宝庫に忍び込み、一つの望遠鏡をすり替えるという大胆な行動に出る。彼の目的は、かねてより研究していた 顕微鏡 を完成させることだった。しかし、その現場を徒士組の 木下丈右衛門 に見られてしまう。

丈右衛門はこれを口実に与之助を強請り続ける。兄の 折田信蔵 は与之助の異変を察し、問い詰めるが、与之助は真実を明かせないまま金を無心する。そんな中、与之助を案じた信蔵は、遠縁の孤児 由紀 を彼の元へ送り込む。しかし、与之助は彼女の想いを受け止められず、むしろ兄・信蔵こそが由紀の心を得るべきだと考えていた。

そして、丈右衛門の強請はついに頂点に達する。彼は与之助の父・折田税所に直接掛け合い、百両以上を要求すると脅す。追い詰められた与之助は、丈右衛門を斬り、死体を崖下の川へと落とすが、自らも致命傷を負ってしまう。

最後の力を振り絞り、兄に全てを託した与之助。顕微鏡の完成、兄への感謝、そして由紀の幸せを願いながら、彼は静かに息を引き取る。その亡骸のそばには、彼の愛した おだまき の花が、静かに揺れていた――。

書籍

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