『日本婦道記 竹槍』

日本婦道記 竹槍 山本周五郎

あらすじ

江戸時代末期、多摩郡大津浦では、異国船の来航が人々を不安にさせていた。地元の資産家である篠山茂市兵衛の娘、おきぬは、女性たちにもいざという時に備えるべきだと考え、裁縫稽古所の仲間たちを誘い、竹槍の稽古を始める。しかし、その中で唯一、稽古に加わらず、何かと理由をつけて帰ってしまう娘がいた。それが、貞子だった。

貞子は、かつて父・藏原伊田夫が主君・成修の命を受け、追放され切腹した過去を持つ。彼女は母と幼い弟を支えるため、裁縫の仕事をしながら生計を立てていた。仲間たちは、貞子が稽古に参加しない理由を「逃げている」と捉え、特におきぬは厳しく非難する。おきぬは貞子に対し、「私たちは遊びで竹槍を振っているのではない。国を守る覚悟のためにやっているのだ」と迫り、「邪魔になるから来ないでほしい」とまで言い放つ。

貞子は黙ってそれを受け入れ、稽古場を去る。しかし、その後も彼女は静かに裁縫の仕事を続け、師匠である園女の温かい支えを受けながら生活を立て直していく。

そんな中、竹槍の稽古は次第に参加者が減り、おきぬ一人が熱心に続ける状況になってしまう。そして、ついに異国船が再び沖に現れる。人々が混乱する中、おきぬは貞子のもとへ駆けつけ、貞子の決意を確かめる。すると、そこには新しい肌着を着て袴を締め、武家の娘らしく凛とした姿の貞子がいた。

貞子は「私は最初から覚悟を決めていた。竹槍がなくても、かんざし一本でも戦う覚悟がある」と静かに語る。その言葉におきぬは衝撃を受け、貞子の本当の強さを理解する。そして、貞子と共に戦う決意を固める。

最終的に、異国人たちは地元の人々によって捕らえられ、船に戻されて撤退する。おきぬは、自分が誤解していたことを認め、貞子に謝罪するとともに、彼女と共に歩んでいく決意を新たにするのだった。

—— 竹槍を振ることだけが強さではない。真の覚悟とは何かを問いかける感動の物語。

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