『人情武士道』

「人情武士道」山本周五郎

あらすじ

信子は、佐藤家の用人・佐藤欽之助の妻として、平凡ながら穏やかな生活を送っていた。そんなある日、かつての友人・和枝が訪ねてくる。華やかで勝気だった和枝は、親の反対を押し切って恋愛結婚をしたものの、夫・寺門市之進が浪人し、生活は困窮していた。和枝は夫の再起を願い、信子に士官の口を探してほしいと頼る。

信子は、夫の欽之助を通じて、佐藤家と親しい老職・大沼将監に寺門市之進のことを相談しようとするが、欽之助は「武士が妻を通じて士官の口を頼るなど恥ずべきこと」として強く拒絶する。その後、寺門市之進は偶然、欽之助と再会し、かつての因縁から果たし合いへと発展する。果たし合いの結果、欽之助は敗れたかに見えたが、その一部始終を見ていた大名家の家臣が市之進の剣の腕を見込み、彼を士官として取り立てることになる。

和枝は再び信子を訪ね、夫が士官したことを誇らしげに語るが、その裏では、欽之助の計らいによるものだった。実は欽之助は、果たし合いの最中、市之進にとどめを刺すことなく、あえて勝利を譲っていたのだった。この真実を知った信子は、夫の深い思いやりと誇りを改めて知り、彼への愛情を新たにする。そして、信子は自らの懐に新たな命を宿していることに気づき、夫との未来に希望を抱くのだった。

武士の誇りとは何か、そして人としての情とは何か——静かでありながらも心を揺さぶる物語が展開される。

書籍

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