『与茂七の帰藩』

「与茂七の帰藩」山本周五郎

あらすじ

彦根藩の剣術道場「進武館」では、婿養子として藩に迎えられた金吾三郎兵衛が圧倒的な強さを誇り、「白い虎」と恐れられていた。しかし、ある日、かつて「野牛」と呼ばれた乱暴者、斎東与茂七が江戸から帰藩する。

与茂七は三年前まで道場の筆頭として君臨していたが、突然江戸へ出され、消息を絶っていた男だ。三郎兵衛は、彼を力でねじ伏せ、自らの強さを証明しようと挑発する。しかし、与茂七は何故かその挑発を避け続け、一向に応じようとしない。

周囲の藩士たちは、かつての猛者である与茂七が三郎兵衛を恐れているのではないかと噂し始める。だが、実際の与茂七は、己の過去と向き合い、かつての自分とは違う道を歩もうとしていたのだった。

そんな中、三郎兵衛は与茂七がかつて松子に想いを寄せていたことを知り、激しく憤る。そして彼は、松子に離縁を言い渡し、与茂七に決闘を申し込む。決戦の場は松原の湖畔。

夜霧の中、松明の火が燃え上がる丘の上で、ついに二人の剣が交わる。激しい戦いの末、与茂七は三郎兵衛を圧倒する。しかし、彼はとどめを刺さず、三郎兵衛を殴りつけながら叫ぶ。

「貴様は、大馬鹿野郎だ!」

己の傲慢さに気づいた三郎兵衛は涙を流し、敗北を認める。こうして、「野牛」と「白い虎」の戦いは終わり、彦根藩から二人の猛者が姿を消すこととなるのだった。

書籍

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