『日本婦道記 壱岐ノ島』

「日本婦道記 壱岐ノ島」山本周五郎

あらすじ

江戸時代、壱岐の島の貧しい農家に生まれた吉蔵は、農夫として生きることに疑問を抱いていた。兄の幸蔵や父の作太郎は、当たり前のように土を耕し、米を作ることに誇りを持っていたが、吉蔵は学問に憧れ、百姓以外の生き方を求めていた。

そんな吉蔵に、母のお民は厳しく言い放つ。「百姓の家に生まれながら、米を作らぬ者に食わせる飯はない。この家から出て行け」と。家を追われた吉蔵は、小屋を建て、学問に打ち込むが、夜な夜な訪れる母の姿を見て、彼女が息子を案じていることを知る。

その頃、日本の海には異国の船が頻繁に現れ、壱岐の島も防備を固める必要に迫られていた。東光寺の住持拙庵のもとで学問を続けていた吉蔵は、母との対話を通じて気づく。母の厳しさは、ただ息子の将来を案じるものではなく、「この島を守る者になれ」という強い願いだったのだ。

やがて吉蔵は、自ら鉄砲を学び、国を守る道へと進む。母の叫びに突き動かされ、彼は壱岐の島を護る者として、新たな一歩を踏み出すのだった。

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