『千本試合』

「千本試合」山本周五郎

あらすじ

江戸時代、紀州の地に突如現れた謎の浪人・草苅馬之助(成瀬格之進)。彼は「千番仕合」と称して各地の剣豪たちを次々と破り、その名を轟かせていた。しかしその真の目的は、幕府の命を受け、紀州の詳細な地図を作成することだった。

田辺城の侍・和泉三郎兵衛は、馬之助の試合を黙認しつつも、紀州の名誉のため彼と真剣勝負に臨む。だが、その実力差は歴然としており、三郎兵衛は敗北し重傷を負う。しかし、彼はただの浪人とは思えぬ馬之助の器量を見抜き、なんと紀州藩への仕官を勧め、さらには妹・お志保との縁談までも持ちかける。

その一方で、三郎兵衛の縁戚である井藤金之助は、馬之助の存在を快く思わず、卑怯な手を使って討とうと画策。お志保は兄の思いを汲み取り、雷雨の夜、必死に馬之助のもとへ駆け、暗殺の危機を知らせる。

やがて、紀州藩主・大納言頼宣は狩りの場で馬之助の真の目的を見抜く。そして、ただ浪人を追い払うのではなく、「紀州に残り、千番仕合を続けること」を命じる。これは、武士としての誇りを試しながらも、彼を紀州に留め、地図作成を認める巧妙な策だった。

こうして、馬之助は紀州藩の中で異例の立場を得ることとなる。そして、お志保もまた、彼の運命に寄り添うことを決意するのだった──。

武士の誇り、知略、宿命、そして秘めた想いが交錯する物語。その果てに彼らが見た未来とは…?

書籍

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