『誉れの競べ矢』

あらすじ
若き伊達政宗が鷹狩りの帰途、飛び立つ鷹を射止めることができず、家臣たちも次々と失敗する中、一人の娘が見事に鏑矢(かぶらや)で鷹の翼を射抜く。娘の名は小菊。猟師の風体ながら驚異的な弓の腕前を持つ彼女は、政宗の城へ招かれる。
しかし小菊にはある秘めた目的があった。父・浦上靱負はかつて伊達家に仕える軍学者であったが、弓の腕を試され、弓術師範・山岸次郎七との比べ矢で敗北し、屈辱の末に城を去っていた。しかし、それは単なる敗北ではなく、次郎七が仕組んだ不正があったのだ。父の名誉を汚されたことを知った小菊は、密かに弓の修行を重ね、再び伊達家の前で弓を引く機会を狙っていたのである。
城で行われた再びの比べ矢。次郎七は圧倒的な自信で挑むが、小菊は彼の策略を見破り、見事な技で勝利を収める。そして、父の汚名をそそぐ証拠を示し、次郎七の不正を暴くのだった。驚愕し、深く反省した政宗は、小菊と靱負の武士としての誇りを認め、彼らを伊達家のために迎え入れることを決意する。
さらに政宗は、片倉景綱の遺言を思い出し、己の未熟さを悟る。そして、自らの左目を潰し「独眼竜」として新たな覚悟を持ち、天下を目指すのであった。