『梅雨の出来事』

「梅雨の出来事」山本周五郎

あらすじ

梅雨の雨が降りしきる城下町。普請奉行の堀保之助は、ある夜、黒装束に白頭巾の怪しい男と遭遇する。男は突然斬りかかってきたが、保之助はとっさに溝へ飛び込んで難を逃れた。後に着物が背中から二尺ばかり切り裂かれていたことが判明し、町中が騒然となる。

その夜、町奉行の坂井又兵衛のもとへ報せが入る。山牢に収監されていた囚人竹二郎が、何者かの手引きで脱走したというのだ。竹二郎は過去に仲間を斬り、終身刑を科された凶悪犯。彼が逃亡したことで、城下町の警備が一層厳しくなる。

数日後、再び保之助は主町で黒装束の男と遭遇する。男はすぐに逃げ、保之助は追いかけるが取り逃がしてしまう。しかし、この事件の直後、藩の重職である島田内記が何者かに斬られ、命を落とす。目撃者によると、犯人は黒装束に白頭巾を身にまとっていたという。

町は騒然となり、捜索の手が広がるが、竹二郎の行方は杳として知れない。やがて、保之助の妻しのは、夫の行動に違和感を覚え始める。夫はなぜか竹二郎と二度も遭遇しており、しかも島田内記が殺された後は、まるで役目を終えたかのように町から姿を消したのだ。そして、しのはある日、夫の持ち物から見知らぬ刀を見つける…。

事件の真相は、単なる牢破りや逃亡犯の仕業ではなかった。梅雨の夜に起こった出来事の裏には、保之助のある秘められた意図が隠されていたのだった。果たして、彼の真の目的とは――?

書籍

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