『白魚橋の仇討』

「白魚橋の仇討」山本周五郎

あらすじ

江戸時代、小藩に仕える高木宗兵衛は、槍術指南役としての腕を持ちながらも、閉塞感のある藩の生活に嫌気がさし、京へ出ることを決意する。宗兵衛は、親友である太田与兵衛に、妻のお俊と幼い子どもたち、美代と宗太郎の世話を託し、夢を追って江戸を去る。

しかし、京での成功を夢見た宗兵衛は、思うようにいかず、失意のうちに帰郷。だが、かつての誇り高き武士の姿はそこになく、酒に溺れ、荒んだ日々を送るようになる。友である与兵衛の助力で藩に復帰するものの、再び自らの人生に絶望し、不正に手を染めたことでついに藩を追放される。

やがて、心の闇に囚われた宗兵衛は、酒の席で与兵衛を理不尽に罵り、激昂の末、刃を向ける。これに応じた与兵衛の仲間の武士によって、宗兵衛は討たれた。夫の死を知ったお俊は、幼い美代と宗太郎を連れ、夫の故郷・彦根へと身を寄せる。しかし、周囲の武士たちは「仇を討つのが武士の道」と二人の子どもに復讐を吹き込み、やがて宗太郎は父の敵を討つことを誓う。

そして15年後、江戸で暮らす三郎(与兵衛の息子)と美代・宗太郎兄妹は運命の再会を果たす。父を失い、運命に翻弄された兄妹は、果たして仇討ちを成し遂げるのか——。運命に抗う者たちの悲劇と、武士の誇りが交錯する壮絶な物語が展開する。

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