『米の武士道』

あらすじ
幕末、甲府城の郡代・料治新兵衛は、領内の五ケ村から百姓たちの米を徴収する。しかし、それは単なる命令ではなく、戦乱の時代に領民を守るための苦渋の決断だった。
五ケ村の名代名主・秋山五郎右衛門は突然の徴収に憤り、娘のお千代も信頼していた新兵衛の行動に戸惑う。しかし、新兵衛はその米を甲府城ではなく、領民のために備蓄する蔵へと納めていた。それは、戦の混乱で奪われることを防ぐためだったのだ。
やがて、幕府側の甲府城は新政府軍の進軍を受け、城を守るために米の徴収を命じる。与力の山田権之助らが、新兵衛に蔵の米を差し出すよう迫る。しかし、新兵衛は頑なに拒否。米は領民のものであり、戦の兵糧として使わせるわけにはいかないと主張する。
激怒した甲府城の勤士たちは新兵衛を襲撃するが、そこへ五ケ村の農民たちが駆けつけ、新兵衛を守るために立ち上がる。戦乱の中、新兵衛は傷を負いながらも米を守り抜き、甲府城は戦わずして新政府軍に明け渡されることとなった。
戦が終わり、お千代は初めて新兵衛の真意を理解する。彼の行動は、ただ武士の忠義に生きるものではなく、領民の命を守るためのものだったのだ。幕末の混乱の中で、武士として、そして人として貫いた「誇り」と「信念」。それが、「米の武士道」だった。